日々の観測記録 2022/5/26【通算70話】
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【はじめに】
本シリーズを読むにあたっての諸注意を以下にまとめています。
初めての方は一度ご確認いただければ幸いです。
https://www.fav.fan/Likely_15Night/Dkdl6
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佐藤「……暇だなぁ」
結町「……(ジーッ」
佐藤「なーんか面白いことないかな〜……ねぇかぁ」
結町「……(ドキドキ」
佐藤「…………」
結町「……(ソワソワ」
佐藤「……あの、そこの君、何か用……?」
結町「っ!? ひゃあああっ!!(タタタタタ……」
佐藤「えっ、ちょっ……行っちゃった」
* * *
〜その翌日〜
佐藤「…………」
結町「……(ジーッ」
* * *
〜そのまた翌日〜
佐藤「…………」
結町「……(ジーッ」
佐藤「……だから、何か用?」
結町「うひゃぁぁあ!?(タタタタタ……」
佐藤「……ストーカー?」
* * *
〜一週間経ちまして、放課後〜
佐藤「…………」
結町「……(ジーッ」
佐藤(今日も見られてるな……)
結町「……よし!」
佐藤(あれ、こっちに近付いてくる)
結町「あ、あのっ!!」
佐藤「な、なに?」
結町「……入部しませんか?!」
佐藤「何に?!」
* * *
佐藤「……えーっと、つまり、結町さんは新しい部を立ち上げたいから、俺に部員になって欲しい……ということでいいんだよね?」
結町「は、はいっ! 佐藤せんぱいは帰宅部って聞きましたので……!」
佐藤「……あの、作りたい部の名前、もう一度聞かせてもらっても?」
結町「はい! 『世界征服部』です!」
佐藤「……何をする部なの?」
結町「えへへ……私が魔王になって、世界を征服するための部です……!」
佐藤「いや照れながら言われても」
結町「せんぱいは、世界征服に興味ありませんか……?」
佐藤「興味あるなし以前に、絶対通んないよ? 申請」
結町「あぅぅ、せんぱいまでそんなこと……」
結町「でもわたし、どうしても世界征服部を作りたいんです……協力してくれませんか、せんぱい……?」
佐藤「そう言われてもなぁ……」
結町「せ、せんぱいが望むなら、世界の半分をさしあげます! ……ダメ、ですか?」
佐藤「……どうして俺なの?」
結町「その……他の子に頼んでも、話半分でしか聞かれへんかったり、馬鹿にされたりして……」
結町「でも、せんぱいなら、きっと話聞いてくれるかなって……」
佐藤「俺なら?」
結町「だって、せんぱいも魔王に憧れてるんですよね?」
佐藤「え゛」
結町「主人公よりも悪役の方が好きなんですよね?! 勇者の仲間になるよりも魔王に仕える方がいいんですよね?!」
佐藤「ど、どこでそれを……」
結町「あっ、そのっ、この前……」
* * *
〜ある日の帰り道〜
男子A「お前、やっぱあのゲーム“魔王様”推しになったか〜」
佐藤「まーなぁ」
結町(魔王様……!? あの人、今魔王様って言った!!)
佐藤「マジでめちゃくちゃカッコいいじゃん魔王。随一だよ随一」
男子A「俺は普通に主人公の方が好きやけど、佐藤はいっつも悪役推しになりがちやな」
結町(悪役推しなんやあの人……!)
佐藤「でも魔王は悪役って訳でもないんじゃないか? 確かに人間視点からは悪に見えるけど、魔王には魔王なりの正義があるって感じ」
結町(魔王には、魔王なりの正義……!)
男子A「じゃあやっぱり例の分岐では?」
佐藤「うん、魔王の方に味方したいなぁと。勇者側に行っても楽しそうだけど、魔王の配下として仕えたいという個人的欲求には抗えない」
結町(魔王の配下として、仕えたい……!!)
結町(あ、あの人や……! あの人しかおらん〜!!)
* * *
結町「ということでしたので……!」
佐藤「いやそれゲームの話だよ?!」
結町「でも、私もゲームから魔王に憧れたので……!」
結町「せんぱいさえ良ければ、不束者な魔王ですが、私に仕えてみませんか?!」
佐藤(もう魔王気取ってるよこの子……)
結町「……(ジーッ」
佐藤(なんか変なことに巻き込まれてるけど……でも、暇であることには変わりないしなぁ)
佐藤(それに、後輩に頼られるなんて滅多にないし、あの期待の眼差しを無下にするのは可哀想だよな……)
結町「……あ、あの、やっぱり……」
佐藤「いいよ」
結町「そ、そうですよね……やっぱりダメ……って、え?」
佐藤「その……世界征服部? に、入ってもいいよ」
結町「……ええぇええええ?! ほ、ほほ、ほんまに?! いいんですか?!」
佐藤「ただ、入るからには、こっちも色々口を挟ませてもらうよ。いい?」
結町「は、はいっ! せんぱいは、私の腹心ですので……遠慮なく、なんなりと!」
佐藤(もう腹心扱い??)
佐藤「あー、とりあえず、ずっと立ち話もなんだし、どっかお店入る?」
結町「あ! そ、そうですね! 行きましょう!」
* * *
佐藤「――つまり、世界征服部として申請を出すことは、絶対オススメしない」
結町「は、はぁ」
佐藤「部さえ作れればなんでもいいなら、表向きは別の部として申請して、世界征服部としての活動は裏でこっそりやる……とか」
結町「わぁ……! なんか、秘密結社って感じですね……!」
佐藤「あ、そういうのも好きなの」
結町「えへへ……」
結町「でも、どんな部として申請すれば良いのでしょう?」
佐藤「まあ、他の学校にはあるけど、うちの学校には無い……みたいな所を狙うのが確実かな」
佐藤「確か、学校のホームページに、部の一覧が載ってたはず……」
佐藤「……あった。このページ」
結町「じーっ……うーん、ここにない部って言われても、パッとは思いつかないです……」
佐藤「そうだなぁ。君、なにか趣味とかある?」
結町「え? えーっと……編み物とか、アクセサリーみたいな小物作りは好きで、ようやってますよ」
佐藤「……それだ」
結町「ふえ?」
佐藤「手芸部はうちの学校にない。狙い目だよ!」
結町「しゅ、手芸部ですか……! 世界征服と一番正反対にありそうな部活ですけど……」
佐藤「なら、カムフラージュにはもってこいじゃない? それに、どうせなら楽しく活動できた方がいいでしょ」
結町「おぉ……なんかそんな気がしてしました! では、世界征服の第一歩は手芸から始めましょう!」
佐藤「……君のいう“世界征服”の定義が気になるところだけど、まあ、そういうのは後で聞くよ」
佐藤「あとは人数と……顧問の先生が必要か」
結町「うっ……」
佐藤「確かうちの学校は、生徒が最低2人と顧問の先生1人で申請自体は可能だけど、少なくとも5人参加人数がいないと、申請が通ることは無いって聞くよ」
結町「5人かぁ……」
佐藤「まあ、手芸同好会として参加者を募れば、集まりはするんじゃない?」
結町「同好会……? あ、そっか。いきなり部は無理なんやっけ」
佐藤「うん。まずは同好会から始めて、功績を挙げたり、長い間活動を継続したりしたら、部として認められる事もある……って感じだったかな」
結町「じゃあ、しばらく私達は『世界征服同好会』ですね!」
佐藤「物騒なことを同好してるなぁ……」
佐藤「まあ問題は顧問の先生だな」
結町「うーん……世界征服に憧れてて、手芸も好きな先生……おらへんかなぁ」
佐藤「絶対いないよ?」
結町「なんでそんなこというんですかぁ、せんぱい……」
佐藤「まあそれはそれとして、とりあえずはがんばろっか。手芸同好会」
結町「そうですね……あ、せんぱいせんぱい」
佐藤「なぁに?」
結町「せんぱいは今日から私の配下ですので、忠誠を誓ってください」
佐藤「……は?」
結町「ち、誓ってくださいよぉ素直にそこは……」
佐藤「はいはい。こういうのは形から入るのも大事だもんね」
結町「ですですっ」
佐藤「……未来の魔王様、俺は貴方に忠誠を誓います」
結町「ぉ、おぉ……!」
結町「くっ、くるしゅうない!」
佐藤「……その返答はなんかおかしくない?」
結町「突っ込まないでくださいよ〜!」
* * *
〜翌日〜
結町「えっへへ〜、きょっうかっらせんっぱいっとせかーいせーいふく〜♪」
結町「……はっ! あれ……せんぱいや!」
結町「せんぱーいっ!」
佐藤「あ、おはよう結町さん」
男子A「え……えっ?! 誰?!」
結町「……!?」
結町(う、うわぁぁぁぁ!! せんぱいだけや思ったら、せんぱいのお友だちもおる〜!! し……知らん人と喋るん、こわい〜!!)
結町「し、失礼しまっ、します〜!!(タタタタタ」
佐藤「ちょ、結町さ〜ん?! ……行っちゃった」
男子A「え、佐藤、誰あの子?! え、なに、彼女?!」
佐藤「違う違う」
男子A「じゃあ、あんなかわいい子とどういう関係なん?!」
佐藤「あー……」
佐藤「……新しい“推し”?」
男子A「いやリアル後輩に“推し”てお前……」
―TODAY'S END―
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【注意】
※本編はここで終了となります。続きはおまけテキストだけですので、予めご了承の程をよろしくお願いいたします。