日々の観測記録 2022/4/1【通算57話】
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【はじめに】
本シリーズを読むにあたっての諸注意を以下にまとめています。
初めての方は一度ご確認いただければ幸いです。
https://www.fav.fan/Likely_15Night/Dkdl6
また、今回のいいね特典にキャラ設定テキストは含まれません。
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――天界、エリアSPH観測室
少女「……『そうして、少女は白百合のベッドに身を填め、安らかに眠りに落ちるのだった』……いや、安らかじゃなくて穏やかって表現の方が適切かな……」
少女「……よし! 今日の観測記録は、これで終わりっと」
???「お疲れ様です、ディスシエラ」
ディスシエラ「あ……マチルダ様! お疲れ様です!」
マチルダ「ふふ、貴女もすっかり、観測係が板についてきましたね」
ディスシエラ「えへへ、まあもうすぐ4年も経ちますし」
マチルダ「初々しいですね……4年“も”とは。生前の感覚が残っている証拠です」
ディスシエラ「?」
マチルダ「貴女は天使として、これから久遠の時を過ごすのです。今から千年も経てば、あの4年はちっぽけな物だったと思うことでしょう」
ディスシエラ「せ、千年ですか……」
マチルダ「時の流れはあっという間ですよ? 私なんか、百年前の出来事が、つい昨日のことのように感じてしまう時があります」
ディスシエラ「私もそうなるのでしょうか……怖いような、楽しみなような」
マチルダ「うふふ……」
マチルダ「そうだ、ところでディスシエラ、今日は何の日か分かりますか?」
ディスシエラ「え? えーっと……4月1日だから、エイプリルフール?」
ディスシエラ「嘘を吐いても許されるイベントでしたよね。私達には縁がないですよね、天使は嘘吐けませんから」
マチルダ「確かに、エイプリルフールというイベント自体は、我々天使とは縁遠いものです。しかし、『4月1日』という日は警戒しておくに越したことはないですよ」
ディスシエラ「4月1日に? それはいったい何故ですか?」
マチルダ「4月1日という日は、様々な境界が曖昧になる日なのです。それは、前年度と新年度の境を乗り越えた直後ということが影響しています」
マチルダ「とりわけ、午前中は年と年の狭間に世界が置かれているような状態にあり、最も不安定な時間なのです」
マチルダ「その不安定な時間に、嘘と誠の情報が混ざり合ってしまって、何が本当で何が嘘なのかあやふやな事象が、世界中で観測される」
マチルダ「その結果、何が起こるのか? ……境界が確立するまでの間、つまり、4月1日の間だけしか存在しない、あるいは、観測し得ない世界が生まれてしまうのです」
ディスシエラ「えぇっ、うそ……?!」
マチルダ「その世界は本来あるべき運命から外れた、まさしく綻びのような、不整合な世界。しかし確かに観測されてしまい、存在してしまった世界」
マチルダ「貴女はまだ観測係になったばかりですので、存在が不安定な世界の観測はさせないよう振り分けられているのですが、今後はそのような綻びを持った世界を観測する機会も設けられるでしょう」
ディスシエラ「うぅ、大変そう……」
マチルダ「大丈夫。貴女がすることはこれまで通り、観測して、記録するだけです。綻びが見つかった時は、その事実を報告してくれるだけで良いんですよ」
ディスシエラ「あ、そうなんですね。ちょっとほっとしました」
マチルダ「ふふ。ただ……私は、貴女にいずれ司書天使になって欲しいと思っています」
ディスシエラ「え、私が司書に?!」
マチルダ「貴女には、そちらの方が向いていると思うのです。もちろん、その為には経験を積まなければなりませんし、すぐにという訳では無いですが……」
マチルダ「人間の感性を持つ今の貴女にとっては、遠い未来。我々天使の感覚からすれば、そう遠くない未来。貴女が司書天使になってくれている事を、私は期待しています」
ディスシエラ「きょ、恐縮です……!」
マチルダ「司書天使になれば、綻びを持った世界の修復作業……綻び結びも行わなければなりません。その時の為にも、今の内から慣れておきましょうね」
ディスシエラ「はい! 来年の4月1日、変な世界が無いか注視します!」
マチルダ「ふふ……」
ディスシエラ「あの、綻びだらけの世界が生まれる以外に、4月1日で注意しないといけない事って、なにかありますか?」
マチルダ「そうですね……」
マチルダ「先程も言いましたが、4月1日は境界が曖昧になる日。その境界とは、ありとあらゆる世界の境界も含まれます」
マチルダ「例えば、そう。本来なら越えることが出来ないような境も、消えてしまうかも知れない」
ディスシエラ「それって……?」
マチルダ「我らが棲む天界は、通常であれば他の世界から隔離された、他者には観測できない世界」
マチルダ「もし、天界と他の世界とを隔てる境をも曖昧になるとしたら?」
ディスシエラ「……私たちが下界を観測しているのと同じように、誰かが天界を観測してしまうかもしれない……?」
マチルダ「……きっと、今も見られているのでしょう。いや、読まれている、といった方が適切でしょうね」
ディスシエラ「え?」
マチルダ「御観測頂き、ありがとうございます……上位存在の皆々様」
マチルダ「それでは、ごきげんよう」
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【注意】
※本編はここで終了となります。続きは本編とは無関係のウチの娘達によるおまけ漫談だけですので、予めご了承の程をよろしくお願いいたします。