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序言 祈りの森

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朝昼の記憶はおぼろげだった 日が暮れてから一日が始まる 大粒のダイヤが空から降ってきて、 丸いガラスの天井に弾かれると 雪粉のようにまばたき散るのだ 音のない森の奥で、私と僕は互いの瞳の中をのぞいた 片方に不安が、片方に充足が在った 私と僕は抱き合って眠る インクを垂らしたような山の端の 小さき生家を想いながら 私と僕が目覚める前に、 終わってしまった物語があった 優しい母と偉大な父が、名を告げる前にいなくなったので 私と僕が抱き合って、 天井を見上げながら あったはずの手足をはばたかせ ただひとつの命を乞うていると おごそかな教会の窓から 声なき光がこちらを見た 光は私と僕を、只一つとして数えてくれた 「おまえたち一人一人のはるか記憶の彼方に、 流れる流星や、清い川のせせらぎや 麗しい花たちや、朝露のきらめきがあるのだ」 私と僕は納得し この世界の美しさを想うたび ああ森羅万象の、ただ被造物のひとつとして おのれも証あるものの一つであると、 ただ安堵して、瞼を閉じることができたのだった。 朝昼の記憶はおぼろげだった 今日もまた、 日が暮れてから一日が始まる 日び夜が長くなるたび、 哀しい気持ちが頭をもたげた 僕らの命がいかほどであろうと_____ 主よ あなたが示す真理の中に 私や僕や、名も知らぬ多くのものたちが その存在を記されますように 朝昼を失い、ついに終わらぬ眠りが迎えに来たとき 微笑んで我が名を受け入れられますように 私は僕を 僕は私を 互いの運命を受け止めますから、 昼が潰えてもこの瞳が いつも光を見ていますように 手を取り合って只待ちましょう 静かなまぼろしの 祈りの森で。

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